Lab Report 005

Lab Report 005

三人称視点VRライブシステムを

利用した静的なアクティビティ

におけるアンケート結果解析


リリース日 2019/1/21

報告者 浅子雄一郎 七沢智樹

概要

前稿までの「三人称視点VRライブシステム」(特許出願中)を利用した動的なアクティビティに対して、身体的な動きを伴わない「静的なアクティビティ」を体験したVRシステム被験者から得られたアンケート解析の結果を提示する。

1. はじめに

静的なアクティビティとして設定した内容は、平安から幕末まで神祇伯として宮中祭祀を司ってきた白川伯王家(白川伯家神道)に伝わる「祓詞(はらいことば)」の奏上と、修練法の一つとしての「自修鎮魂」を、三人称視点VRライブシステムで被験者自身の後ろ姿が映った映像を見ながら行ったものである。

このVRを使用しないときと比べて、どのような変化や違いを感じたかについて、被験者にアンケートを実施した。尚、このアンケート解析は、社内で実施したモニター実験と、VR合宿で一般の方から得られたアンケートを対象とした。(図1)

2. 静的アクティビティにおけるアンケート解析結果

2.1 社内モニター実験結果


まず、迷路のような動的アクティビティと違い、多くは正座の格好でVR映像に映し出された自身の背中を見ているだけという状況であったが、「不思議な感覚」「祓い鎮魂に集中できた」といったような、何かしらの「体感」を得ていた割合は、次のグラフのような高い値を見せた。(図2)

図1解析データ情報

図2「初体験(未体験)の感覚」として今回の体験を振り返っていた割合(静的アクティビティにおける社内モニターアンケートより)

「質問・要望」以外は、すべて「初体験(未体験)」にまつわる内容であったことから、Report002で報告したものと同様に、「初体験(未体験)」がほぼすべての割合を占めていることがわかる。

このことから、三人称視点VRライブシステムは、それが動的な使用であるか、静的な使用であるかといったことに関わらず、どちらもほとんど全ての回答者が「初体験(未体験)」の感覚を体験していたことになる。

次に、この静的なアクティビティにおける具体的な影響を観察することで、動的なアクティビティとの比較を試みる。静的アクティビティを終えたあとに回答を得たアンケートからは、次のような感想群と割合が抽出された。

図3 VRを使用して行った静的アクティビティ参加者のコメント内訳

回答者のうち半数は、「祓い鎮魂に有用であると感じた」「客観視の視点を新たにした」のどちらかについて、コメントしている結果となった。これらの回答についてさらに具体的に見ると、次のようなコメントが抽出された。


●「普段、自分のことを思い浮かべながらうっ滞などを祓うときよりも、客観的にうっ滞を指摘できるように思います。自分からはなれて自分を見るということを実感しました。」


●「他人事のような、客観視というのはこういうことかな?!と言葉でなく映像で体感するという感覚を簡単に理解できるような気がしました。」


●「ものすごく集中できました。」


●「鎮魂を自分の背中にしていると、スッとした体感がありました。」


●「自分が自分の中から解放される感じがとても良いです。」


●「いつも一人でやっているとき以上に祓いに集中出来ます。その分言葉も一語一語に集中していると感じました。」


●「通常でやるよりも効果が高いことが分かりました。」


●「お清めを人にするときのように 自分のうっ滞しているところがはっきりとわかった。そこへ祓いを向けるとすぐに祓われてVRの自分の見えている背中が全く変わってくるのがわかりました。ヘッドセットを装着しているせいか視野が狭まるような1点に集中するような感覚があるので鎮魂にちかいような(VR上の自分が鎮魂石になったような)感覚で祓いをあげていました。またいつもとは違う感覚が新鮮でさらに集中できたのかもしれません。」


●「自分に向けて祓詞を奏上すると祓われている感覚がしました。」


●「普段より鎮魂状態になるのがずっと早く、30秒程度で深く落ちそうになる感覚がありました。あまりに急なので一度意識的に鎮魂をときましたが、2回やっても同じでした。」


●「「客観視」という言葉は使い慣らされた言葉ですが、自分を客観視するということが、実態を伴ってできる貴重な体験に感じました。」


●「自分の背中にお祓いを上げていると身体が熱くなってきた。普段のお祓いでは感じられない感覚があった。(普段のお祓いでもかなり効果はあるが、身体が熱くなるほどはなかった)」


●「このVRによる客観視は、「私」を祓うのにとても効果的な手法であると思った。VR体験が完了して15分くらい経過しているが、しばらく続いている。」


●「お祓いでも鎮魂でも、自分の中で変化している様子がリアルタイムで感じられやすい感覚がありました。」


●「自分の頭の思考が浮かんでもすぐに俯瞰している別の自分(後ろから見ている自分)にも気づくという感じがして、その思考から離れやすい…というような感じ」


これらのコメントを総合すると、「祓いと鎮魂のやりやすさ」「祓いと鎮魂の効果」「祓いと鎮魂の体感」が、それぞれ向上しているものとして観察できる。

2.2 VR合宿アンケート解析結果


つぎに、同様の静的アクティビティとして、2018年11月に行われたVR合宿での祓い・鎮魂のアンケートデータを解析することで、2.1のデータとの比較を試みる。

アクティビティを終えたVR合宿の参加者から得たアンケートでは、次のような感想群と割合が抽出された。

図4 VRを使用して行った静的アクティビティ参加者のコメント内訳(VR合宿)

図3の社内モニター実験における静的アクティビティでの内訳と同様、「祓い鎮魂に有用であると感じた」が、最も上位の値を占めた。その値は全体の7割近くを占め、ふだん自宅などで行う祓い鎮魂とは比べてまったく違った体感を得ていることに加えて、それらの体感が、「祓い鎮魂に有用である」という形で体験していたことが伺える。

これは、VRライブシステムにおける特徴的な要素が、このアクティビティでの体感を促している様子としてあらためて捉えることができるとともに、そのVRライブシステムの特徴的な要素とは、祓いと鎮魂のはたらきと非常に親和性が高いものであると考えられる。

3.まとめと考察

以上のように、三人称視点VRライブシステムによって、おもに「祓いと鎮魂のやりやすさ」を中心として、「祓いと鎮魂の効果」「祓いと鎮魂の体感」が、それぞれ向上していることが観察できた。このことは、「祓い・鎮魂」という日本古来から伝承される伝統的な作法が、三人称視点VRライブシステム、つまり「客観的視点」と密接に関わっていることを物語っている。

そして、このような回答につながった理由を、これまで見てきたVRライブシステムの特徴に求めると、次のような仮説を立てることができる。


①「今ここ」への集中

VRライブシステムでは、それが通常は体験することのない未体験な視点であるため、脳は危険回避を主とした状況分析に動くことが推測される。それによって、焦点は自然と「今ここ」に合ってくることで、「集中できた」といった感想につながっていたことが考えられる。

たとえばマインドフルネスの現場では、思考が自動的に過去や未来へとさまよう「マインドワンダリング」を矯正するということが言われているが、VRライブシステムによる「今ここ」への集中によって、この「マインドワンダリング」が起こりにくい状態で祓い・鎮魂ができていたことが、その理由として推測される。


②「記憶」の想起の回避

①における「今ここの状況分析」に集中するとは、脳が記憶の取り出しや記憶情報とのやり取りを行わない、つまり、祓いや鎮魂中における記憶の想起が回避されていることを意味する。

いわゆる「雑念」とは、思考が自動的に過去や未来へとさまよう「マインドワンダリング」であると捉えることができるが、今ここにおける状況分析が優先される、つまりマインドワンダリングが状況分析よりも劣勢となることで、祓い・鎮魂の「やりやすさ」「効果」「体感」の向上に寄与していたことは、十分に考えられる。

また、「情報の遮断」というVRの特徴によっても、普段の祓い・鎮魂における「感覚」という情報からいわば抜け出し、祓い・鎮魂とはこういうもの、といった「制限」「観念」などからの解放が起こることで、祓い・鎮魂によって起こる変化が最適化されたという推測もできるだろう。


③「客観」による視覚的な具体化とフィードバックが引き出す強調感覚

祓い・鎮魂とは、行う際の自身の姿はもちろんのこと、それらを行うことによる効果や変化といった点において、「目に見えない」「とらえにくい」行為である。

今回、三人称視点VRライブシステムによる「客観的視点」は、この「目に見えない」「とらえにくい」を、「見える」「とらえられる」もの(情報)として提供するが、このVRライブシステムが効果や体感の向上をもたらしたということは、「見える」「とらえられる」ようになること(またはその度合い)と、効果や体感の向上(度合い)には、互いに関係性があるものとして考えることができる。

つまり、Report002における「C.情報が遮断されたと感じることによって、「客観的に」情報を収集する。」「D.視点が物理的に移動したことによって、その視点からの「客観的な」情報を得る。」「E.映像として視覚的に捉えることによって、「客観」が視覚化される。」というVRライブシステムがもたらす特徴的な傾向によって、視覚的(客観的)に「具体化」されたり、映像からの「フィードバック」という形で情報を得ることで、祓い・鎮魂を行っている姿や効果における「見えない」「とらえられない」ものが、行為として、またその効果として、フィードバックを得ながら具体的になることで、それが具体的になった分「強調」されたと脳が判断し、この感覚が実際の祓い・鎮魂による感覚にプラスされることで、「やりやすさ」「効果」「体感」のそれぞれが向上したという感想につながったと推測することができる。